anywaytrip diary

さまざまの、まとまりのない感想

映画『アイネクライネナハトムジーク』 感想

何度か繰り返し観ている映画『アイネクライネナハトムジーク』。初見時から好き。

今日は個人的に印象的だったシーンを記しておこうと思う。(原作と映画は同じシーンがあったり、なかったり。どちらも好きだけど、映画にしかないシーンがかなりお気に入り)。

 

◈立ってる仕事、座ってる仕事。

立ってる仕事って大変ですよね、と紗季が言ったら、座ってる仕事もねって返す佐藤のところ。紗季はデスクワーク志望だと断定してる風な佐藤の言い方。あとで覆されるのが、いい。伊坂さんっぽいなと思って。

 

◈アイスを食べながら曖昧な話をする。

佐藤の軟らかそうな背骨の曲がり具合と、何とも言えない表情のまま台詞なしで場面が変わるところ。前のめり気味な美緒の台詞、直球で好き。あの年頃に、ちょっと年上の異性に訊きたくなる疑問。

 

◈バスをひたすら追いかける。

佐藤がバスを追いかけるシーン。まず、紗季を見掛けて走り出すフォームも(佐藤っぽい)と思ってしまう。骨が柔らかそうっていうか。しゅっとしていなくて、ちょっと可笑しみがあって、佐藤っぽかった(真剣なのを面白がってはいけないけど、いつも周りの人の事ばっかり考えている佐藤が本気出してる!頑張って追い付いて!と)。でもなかなか追い付けなくて(そこがまたいい)。ひたすらバスを追いかけるんだけど、最後の最後でやっぱり困ってる子をほっとけないところ(何故あんな時間に小さな子供が一人で外にいる?って気になりつつ)。心底他人に優しい人なんだなぁって。そして極めつけは、紗季が佐藤に気付いてバスを降りたあと。二人で会話(というかほぼ一方的に佐藤の心情吐露)からの、急いでバスを止めにいって、紗季をバスに押し込み、満面の笑みで見送るところ!何故今その笑み!?答えは何時でもいいってどういう事?!一緒に帰ろうって言ってくれないんだ!(驚いたり、呆れたり、やっぱりそういうとこが佐藤だよな···と妙に納得したり)佐藤って、どこまででも佐藤じゃん!となって、愛らしくて思わず吹き出してしまう。(二度目以降の鑑賞では、にんまり程度で収まっているけれど。佐藤らしさをとても感じるシーンで好き)。

 

◈ただいま、おかえり。おかえり、ただいま。

コンビニ弁当を買って帰宅中の佐藤(あの茶色の袋はコンビニだよね、あの形といい。今後はエコバッグ普及すると袋を見ただけで中身の予想が付かなくなるのかな···などと考えつつ)。自炊してないんだ~と観ていると、自分の部屋に灯りが点いているのに気付いた佐藤。嬉しそう。部屋に入ると紗季が戻ってきていて、夕食の支度中。ただいまとおかえりを交互に。はにかむ紗季が可愛すぎ!佐藤もとっても嬉しそうで、観ているこちらも顔がほころぶ。(二人の食事風景を眺めつつ、色々思ったり。テーブルが小さいからあんな感じなのかなとか、おかずの取り方とか。興味深い。メインは肉じゃが)。紗季の言葉。それを受けての佐藤、やっぱり可笑しみと愛らしさ。二人のやりとり、いいな。この二人、きっかけはいつも佐藤からで、ぽんと投げたら返ってくるタイミングは相手任せ。

 

◈色々繋がっていると後から気付いたり、思い出したり。

実生活でもそういうことあったかも···と小さな出来事の繋りだったり、その後の影響だったりを思い返してしまう物語。何だかんだで佐藤って憎めないな~と。近すぎるといらっとすること多いかもしれないけど、最終的にはその優しさに許してしまう雰囲気を持っている。紗季の意思の強さが羨ましかったり。一真の自由さ、すごい。一真と家族を築ける由美もすごい。和人母の台詞に深く同意。その意味を和人が気付くシーンも観られてよかった(父を踏襲したあの台詞)。美緒は佐藤の言い分で納得していたから、心を許せる第三者の存在って大事だなと。そのあとの由美の台詞も懐の深さを感じる。美人なだけじゃないって最強、一真ってほんとはいい人?とまで思わせられる。美奈子が香澄の髪をバサッと切り落とすところにハッとしたり。大丈夫の手話がリング上で見られるとは、とか。あの男の子と亜美子の関係のその後、実は物語は続いてる?とか。

 

 

映画鑑賞→小説→映画鑑賞∞(時々小説)という流れで楽しんでいる作品。私には合っている。小説はあちこちページを行ったり来たりしつつ、同じ登場人物のエピソードを拾いながら読んだり。最初から通しで読んだり。お気に入りの作品。